私たちは、これまでにグリーン・サステイナブル・ケミストリー(GSC)の実現に向けて、1. 水中での有機合成化学反応の開発2. 高分子固定化触媒の開発3. 新規反応手法の開発4. フロー精密合成の開発の4つの研究課題に取り組んできました。一方で、東京大学は、2021年9月30日に公表した基本方針「UTokyo Compass」で、グリーントランスフォーメーション(GX)を行動計画の柱の一つとして位置付けました。そこで、私たちの研究室のこれまでのGSCの実現に向けた取り組みとGXから新たに「グリーン物質変換」という考え方を生み出し、研究室の出発点としました。グリーン物質変換は、有機合成化学の力をもとにGXの達成を試みるものです。また、これらの指針のもと持続可能な社会の実現に向け、次世代の研究者を育成することで、この考え方を具現化し、社会に貢献することも目標としています。さらに、有機合成化学を基盤とした理学、工学、薬学、農学の各研究領域が連携し、グリーン物質変換を体現すべく、環境に配慮した化学変換法や物質変換法、そしてそのための革新的な触媒の研究と教育を行うことを目的として活動を行っています。私たちの取り組みが、SDGsやカーボンニュートラル社会の実現への架け橋となることを目指しています。

 私たちの研究の成果は、幅広い分野で持続可能な社会の実現に貢献することが期待されています。環境に負荷をかけない化学変換法や物質変換法、新たな触媒の開発は、化石燃料に依存しないエネルギーの創出や環境に配慮した製品の製造、医療技術の向上などに役立ちます。また、これらの技術は国内の科学技術の基盤として重要な役割を果たし、多様性を持った次世代のリーダーや国際的な研究者の育成にも貢献することが期待されます。